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 市民自治井戸端会議
 学習会「ポイントが貯まる図書館は快適ですか?−武雄市立図書館の事例−」(10)質疑応答その3
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【会場】
私は新聞で見たときに、ああ、これは大変なことが起きそうだと、とても心配になりました。力がないからそれ以上動けなかったわけですけれども、今日、始めに山本先生の新聞記事を読んで、ああ、こういう先生がいらっしゃるのか、よかったいう感じで、今日お話を伺いました。私が心配したのが図書館法という法律があるのに、それが蔑ろにされてるのではないかということです。私はもちろん、図書館は指定管理者にしてほしくないんですけど、自治法の方でそういう法律ができて、それを図書館に持ってくること自体がやっぱり市民が反対しなければいけないと思いますけどね。財政のことがわからない人がそういうこと言っていると悪口言う人もいますけど。で、質問ですけれど、川原さんに司書がどういう風に選ばれていて何人いるのかということを伺いたいです。それから山本先生には千代田区に指定管理者にしてもいい例があると新聞記事の方に書いてあるのですが、先生にも千代田区のことを少し話していただきたいと思います。

【川原さん】
司書の方は、以前から勤めていらっしゃった方は継続してCCCに雇用するという形になっています。14〜5人と聞いています。ツタヤ書店の方はアルバイト、スターバックスの方にもアルバイトの方が入っています。図書館部分では継続してCCCが雇用しているという形になっています。

【山本さん】
指定管理者の問題は、指定管理者という制度がいいとか悪いとかいう話ではないだろうと思っているんですね。これは制度ですから、法律に書かれているとおりの制度なんです。あそこにご紹介したように「公の施設の設置の目的を効果的に達成するために必要と認めるときは」という条件が付いているわけですから、そのことができれば指定管理者という制度を使ってそのことをやればいいわけで、そういうことができるという制度なんです。ところが、2003年に法律改正がされて、その当時ご存じのとおり全国的に財政が厳しい、バブルがはじけたという時期ですから、法改正されたときに総務省が出した通知は、あれを人員削減、経費削減の手段として使っていいよというそういう通知を出しちゃったんです。ですから、施設の効果的というのは後の話で、こういうことで、大部分の指定管理者に移行したところというのは、そういう目的で、今までの正規の職員、年間600万とか700万とかいう職員じゃなしに、年間200万とか300万人とかという民間の人が働けば安くなるはずだということで切り替えていったというところが大部分なんですね。ですから、指定管理者という制度を本来の法律の目的に沿ったやり方ではないということです。だから問題があると私は考えています。だけども、逆に、そのことによって、制度を上手に使っている例として、私は千代田区なんかはその例かなと思っているんです。新しく区の図書館ができたときに、国会図書館にいた方を招いて、新しく千代田区の図書館をつくる基本計画から全部準備をされて、こういう図書館を作るんだと、で、そのための運営形態をどうするのかということで指定管理者を選ばれた。で、私は指定管理者のメリットは人材育成に要する経費とか時間とか、司書とかにしても大学卒業で採用して何年か掛けて経験を積んで一人前の司書になっていくという時間と経費をかけずに一定の条件を満たす人を募集できるということ、それからもう一つは司書ばかりでなくてコンピュータのプログラミングができる専門家、それから広告、PRをやる会社、その3社が手を組んで合弁会社を作って、そうするとそれぞれの道のプロを集めてますから図書館経営自体が非常に効率的に効果的にできるという、そういうことを最初から計画してある図書館を作り、そしてできたあとも常に区の担当課と連携を組みながら評価委員会というものを常設して毎年事業評価を行い、そういう意味で指定管理者制度を上手に使った例だろうと思ってますけれども、あまりほかのところがまねができていない。ですから、従来の図書館をただ指定管理者に置き換えただけの形のものがいままで多かった。で、それを今度はツタヤ、CCCというものを入れることによって、今までの図書館の雰囲気とは変わったものをつくるというところが人を引きつけるという要因かなと思います。

【会場】
質問ではなくて2つだけ補足をさせてください。武雄市長の樋渡啓祐は元官僚で指定管理の制定に絡んでました。そういう意味で指定管理の抜け穴を知っていてああいう施設ができたのではないかと思います。あともう一点、指定管理者制度を利用することで武雄市図書館の年間コストが下がったという事実はありません。むしろ、今年度は上がっています。なので、指定管理者制度というのはぼくも反対ではないのですが、使い方次第じゃないのかなと思っています。

【会場】
山本先生に伺いたいのですけども、図書館の無料の原則ですね、図書館資料利用の際にお金を取ってはいけないというのがあるんですけども、例えば今回、川原さんのお話ですと目につくところにツタヤの新刊書、例えばクリスマスの児童書があるんですけど、そういうときに、どのくらいになれば、例えば図書館の本が1冊ある、ほかは全部売り物だというものでも違法状態にならないというか、無料の原則の考え方というか解釈について少しお答えをお願いいたします。

【山本さん】
少なくとも図書館の資料はあそこで無料で使えますから、そういう意味では別に違法ということは言えないと思うんですね。絶対的にお金を払わないと図書館の資料が利用できないとか中に入れないというのであれば違法ですけど、そうじゃないので、法的に違法かどうかといわれれば違法ではないだろうと思います。ただ、まあ図書館法は罰則がありませんので。いずれにしても。

【会場】
私は指定管理者制度というのは公の施設の設置の目的を効果的に達成するために必要と認めると書かれていますけど、基本的には規制緩和という流れの中で、民間、民間、っていってますけど、民間企業に公的なサービスを任せるということ、金儲けの手段として任せるということが大前提だと思うんですね。だから、たまたま千代田区の場合はこういう形でと山本先生おっしゃいましたけど、これの問題を指摘する声もいっぱいあるので、やはりそことのところは伊万里市の図書館に書かれてあったように、市民の知る権利を保障するという一番大事なところを公的な機関がきちっと守るということが大前提でないと図書館の問題を考えるときに大きな過ちになっちゃうんじゃないかなと思うんですね。それからもう一つ、以前の武雄市の職員の方が全部CCCの方に移行したといわれてますけど、ほかのところとたぶん同じだと思うんですが、ほとんど1年契約の短期雇用の雇用形態になっているわけで、決して正社員になっている訳ではないから、そういう意味で言うとやはりそこでもまたワーキングプアを作っていくようなことになっていると思うので、その辺もあわせてしっかり見つめていかないと、問題の本質から見誤ってしまうんじゃないかなと感じているんですけど、そこのところは如何でしょうか。

【山本さん】
時間もないので手短に言いますけど、指定管理者制度というのはおっしゃるとおり、規制緩和です。民間委託ということでできたことは確かなんです。だから制度が悪いということを言ってみても、制度が悪いのではなく使い方が悪いということを見ていかなければいけないだろうなと。上手に使えるなら使った方がいい。で、そうでなければやめたほうがいいということですね。それから職員の話ですけれども、正規の職員は以前の図書館には3人いらっしゃって、それ以外にいわゆる嘱託職員が十何人かいらっしゃったんですね。で、正規の職員の3人の方は市の別の部局に配置転換になり、嘱託の職員だけがCCCに移された。で、おっしゃるとおりたぶん1年契約だろうと思います。

【会場】
山本先生にお聞きしたいのですけれども、武雄市図書館がリニューアルして朝9時から夜9時まで年中無休という運営になりましたと。そういったときに、普通の図書館というのは休みの時に何もしてないかというとそうでもなくて、書架整理ですとか、あとはスタッフの会議とか、蔵書点検ですとかそういったことをやっているわけですけれども、年中無休になったときにそれらの作業というのは無理があるのではと思うのですが、その点について見解をお聞きしたいです。

【山本さん】
蔵書点検というのはたぶん日本的な習慣だろうと思うんです。各国ではあまり聞かないですね。だから別になくても図書館は回ります。ですけど、日々の整理ですとか、昼間できなかった事務処理とかそういうことで時間外に処理をする。昨日の井上さんの話だとやはり12時近くまでランプが付いているといっていましたから、おそらく残業してやられているのだと思います。それから、あとは図書館の職員の会議だとか、そういうのももちろんありますけど、それは今まで休みがあった図書館が変わったからそうであって、もともと休みがなければ工夫するしかないんですけどね。ですけれども、施設的にもやはり維持管理だとかいうこともあるので、全く年中無休というのは問題があるのだろうなと思います。最低でも月に1日とかですね、年中無休といいながらそのぐらいは休んでいるのが一般的だなと思っています。ですから、いままでの日本的な図書館からすればそういう問題が出てくるのだと思いますが、実際問題としては工夫の仕方がありますけど、100%無休というのは無理があるだろうなと思います。

−学習会終了−

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