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 市民自治井戸端会議
 学習会「ポイントが貯まる図書館は快適ですか?−武雄市立図書館の事例−」(4)山本宏義さん-その4
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【山本宏義さん】
そんなことが前提として問題点をいくつか考えてみたいのですが、まず図書館ということで考えていきますと、図書館という施設は図書館が収集した資料を市民の方が利用する施設です。そういうことからすると、単に人が来て自分で必要な資料を見つける、あるいは職員の方に頼んで見つける、で、読む、借りる。借りた後、読んだ後は元に返す。これが原則ですね。どこの図書館でもこれはやってますし、これがなかったら図書館はやっていけない基本的な機能なんですね。ところが、武雄は書店なんですよ。だから、手に取った資料を元に戻すという発想はないんですね。買ってもらえば戻す必要はないので。従ってOPACも棚の表示もそうですけど、普通の人では探せないし戻せない。私たちは図書館で仕事しているものですから、日本十進分類法というみなさんもある程度ご存じかと思いますが、たとえば1、2、3、4、5という分類をして、この番号順に棚を並べているんですね。ですから、OPACで検索をして何番の棚という、何番の棚といえばその番号の棚に行って本を出す、返すときにもそこに返すということができるのですけど、ここの武雄は分類番号じゃなくて棚の番号が表示されるんですね。棚の番号というのは棚板に小さく打ってあるものですから、なかなか探せないんです。これが一つ。

それから棚に並べるのに、先ほどいいましたが図書館では分類番号順に、例えば2だったら歴史、3は社会科学、4は自然科学というように並べていくんですね。ところが、ここは本屋さんですから、本屋さんは普通分類番号を使いませんよね。だいたい今話題になっているようなものをタイトル、見出しにして、それに関係したものをまとめて展示していくとか、そういうやり方ですね。ですから、ここもそうなんです。本屋さんの発想で、一つの見出しのところに分類番号でいうといろんな番号のものが一緒に入れられてしまうということです。ですから、逆に言うと、分類番号で探したり分類番号で戻すということができなくなっているんですね。これは決定的な本屋と図書館の違いでして、そういう意味からこれは図書館ではなく本屋だなということを思ったわけですね。

それから、公共性、公平性と書きましたけど、無料の原則で図書館の場合、図書館法の中では入館料その他図書館資料の利用に対するいかなる対価をも徴収してはならないというそんな条文があるんですね。これを称して図書館の無料の原則というように呼んでいますけれど、図書館法で言いますと、最初のところで図書館は資料を収集して一般公衆の利用に供し、というように書いてあるんですね。ここでいう一般公衆というのは誰を差しているかというと、これは別に住民票があるとかないとか、国籍が日本だとか外国だとかそういうことは一切関係なしに、今そこに来て図書館に入ってきて本を読もうとしている人、全てを指している、そういう法律なんです。図書館法というのは。いわゆる公共図書館というのは誰でも利用できる、しかも無料で利用できる、というのが大原則なんですね。で、武雄を見ますと、入り口に入るのにカネを取られるわけではないんですけれども、先ほど本屋さんと言ったとおり、入ると入り口に本が並んでいるんですね。それで図書館はその奥なんです。そうすると、やむを得ずその本屋の部分を通って図書館のところに行くしかないんです。お金を持たないで来るとどうもバツが悪いと言いますか、そんな感じがします。ですから、お金あるなしにかかわらず利用できるというのが大原則ですから、それから、雑誌が改装前は106種類準備してあったんですね。改装後の図書館を見ますと、数えたら24しかないんですよね。それ以外はツタヤで買いなさいという。ツタヤに並んでいる雑誌を買わなくても見るだけでも構わないというんですけれども、家に持って帰りたいときは買って帰るしかない、もう一つは本屋さんというのはそこで売ってしまえばおしまいなんですけれども、図書館というのは前の古い雑誌、何年も何ヶ月も前のものを見たいというときにはちゃんと保存してあるわけですね。そういう機能が全然なくなっちゃってるっていうようなことですね。それからちょっと前に堀江さん、ライブドアの社長だった人ですが、その人の講演会をやったらしいのですが、会員券を持っている人しか入れませんよという、そういうやり方だったんです。つまり、図書館の利用カード若しくはTポイントカードを持っている人しか参加できませんよという、そういうやり方をしているんです。でも、先ほどいったように図書館というのは誰でも自由には入れるところですから、そういうところでそういうやり方というのは、我々としては納得いかないなというと思っているところです。

それから3番目に図書館かブックカフェかという、こういう書き方していいのかわかりませんけど、慶応大学の糸賀先生が、10月の末に図書館総合展があって、そこで武雄の樋渡市長がCCCの方とかのシンポジウムがあって、そこでいろんなやりとりがあったのですけれども、糸賀先生がこれは公設民営のブックカフェだと言ってまして、もし図書館と言うことではなくて本のある広場とか本のある憩いの場所とか、そういうことで最初から発想しているのなら、もっとネーミングを武雄ナレッジパークとか知のワンダーランドだとかというようにつけていればいいんじゃないのということです。これは別に勧めていることじゃないんですけれども、これは図書館という名前が付くとやっぱり図書館としての機能なり構造がなければ図書館と言えないんですよね。その上でいろんな要素が加わること、それは結構だと思うんですけど、あそこの場合は図書館という機能が非常に後退しているなあという、人集め、集客ということを第一にしたような施設づくりですよね。ですから、糸賀先生もある意味皮肉を交えておっしゃっているんですけれども、最初から観光施設、あるいは集客施設として発足するなら、もう図書館という名前はやめちゃってやればいいんじゃないのと糸賀先生はおっしゃっていましたけど。そういう人を集めるということだけで見れば今までより来館者が5倍になったとか言っていますけれど、それはそれでよかったなということですがねえ、残念ながらあそこは図書館なんですよ。我々よりも地域の方が気の毒だと思うんですけど。

それから4番目に日本図書館協会の指摘事項というのがあります。私も図書館協会の役員をやっているんですけど、図書館協会の役員の立場ということではなくて、あくまでも個人的な立場でお話をさせていただきますが、去年5月に市長がツタヤとの提携ということを記者会見でやった後に、図書館協会もこれは大きな問題だなということで危惧される点をいくつか指摘して見解を出したんですね。これが6項目あります。一番目の指定管理者制度導入の理由というのは、先ほどの地方自治法の244条の2の第3項最初のところにありましたように、公の施設の設置の目的を効果的に達成するために必要だというときに指定管理者制度を導入することが許されている、そのことがCCCに委託することによって公の施設が当初の目的に効果的に達成するかどうか、そういうことを説明する必要があるわけですね。そういうことを一つ申し上げておきたい。

それから2番目が導入の手続きのことを指摘しています。あれは市長がCCCの社長と話をして決めたというようなことですよね。印象としては。それで後追いで教育委員会とか議会とかに説明されているようですけれども、指定管理者制度というのは先ほど読みましたとおり、制度上、法律上はどういう手続きで決めなければいけないということは書いていないんです。それは地方自治の問題ですから。一般に地方自治体でどこかの業者を選ぶというときには、公募をして、一定の条件を示して、これに応募する人は手を上げてくださいということで、その中で審査会などを設けて選考していくというのが普通の手順ですよね。これをなしにあなたのところお願いしますよという話をした。指定管理者を決めるときに私も経験があるのですけれども、必ずしも公募をしない、先ほど社会教育施設の統計をご覧いただきましたけれども、一般社団とか一般財団とかが受けてる場合には公募をしていないというのがかなりあるんです。これは以前から地方公共団体が外郭団体として作っているなんとか事業団とか財団とかいうのがあって、そこにお願いしたい。だけれどもそういうときには何か理由、事情があって、その理由を説明して今回は公募しないで非公募でどこどこに指定管理管理者をお願いする。それを議会に諮ってOKなら決まるという感じなんですね。ですけれども、今回武雄のケースでは、市長がやっているのはCCCのノウハウ、民間のノウハウを活かすことによって、市民の価値が上がるということです。非常に抽象的な話なんですけれども。そういうことしか言っていないんですね。具体的に何々ならどうしたという話ではなかった訳ですね。導入の手続きについてはそういうことがありました。

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